どうぶつの森とにんげんの性

懐かしいやつと再会した。

小中高と、かなり長い期間を共に過ごした山田である。随分と痩せていたので最初は本人か疑わしかったが、顔は確かに山田なので、思い切って話し掛けてみた。

なんだ、あの頃と変わらない山田だった。やけに早口で声のピッチが高い。あの山田だ。

 

昔を懐かしみながら会話を続けていると、徐々に奇妙な感覚が芽生えはじめた。

何故か会話がうまく噛み合わない

知っているはずのことを知らなかったり、なんの脈略もなくビジネスの話を持ち掛けてきたり。混乱状態の頭でどうにかして行き着いた仮説は、我ながら突拍子も無いものだった。

こいつは山田ではない。顔は同じだが、中身が違う。

それを確かめるために、かつて彼が得意だったものを思い起こす。そうだ、魚釣りがあった。そして「最近釣りにハマっている」という設定をでっち上げ、カマをかける。

「まぁ釣りなんて興味ないよな」

「そんなことない、いまでも好きだ」

外した。しかし食い下がってみる。

「じゃあ今度一緒に船乗るか」

「それはできない」

「どうして」

 

 

「その機能は実装されていない」

 

 

そんな夢を見たのは、きっとあれのせいだと思う。

スマホアプリ「どうぶつの森 ポケットキャンプ」

 

それは多くのファン、特にヘビーユーザーにとってちょっと物足りない仕上がりだったと思う。

人の脳は損失を過剰評価してしまう性質を持っている。つまり、得るものより失うもののほうが大きく感じるのだ。だから無料で遊んでおきながら、「◯◯を返して!」と文句を言いだす人がいる。

そういう反応を示す人間は、最初からこのアプリのターゲットに入っていないと思われる。全ての魚をコンプリートして金の釣り竿をゲットしたいのなら、既存のシリーズを遊べばいい。スマホアプリにそこまでのやりこみ要素は必要ない。ちょっとした暇つぶしができて、他者とのコミュニケーションツールとしてゆるく楽しんでもらえればいい。そう製作が判断したのだ。つまり誰も悪くない。

 

現にTwitterを見ると、多くのスクリーンショットやフレンド申請に関する投稿が見られる。スマホユーザー(ゲーマー)向けに作るというのは、この状況こそが重要なのだ。そして今後もクリスマスやら正月やらでイベントをやったりして、話題を絶やさないように運営していくだろう。売り切りのゲームとは根本的に違うのだ。

 

ではこの寂しさはどこにぶつければいいのか。

大丈夫。みんながポケ森に飽きた頃にちゃんとした新作を発表するだなも。

 

Switchを買う金が無いって?

はい、ローン。

 

※この話はフィクションです。実在する山田とは関係ありません。