C94とあの日の夢

あつい一日だった。

夏コミ初日。最高気温は34度。いくら動いても振り払えない熱気と邪悪な汗の匂い。

「コミケは戦場」とはよく言ったもので、実際に体調を崩して車椅子で運ばれている人も見かけた。死因がコミケってのは流石に勘弁してほしいので、会場の外にいる間はタオルを被ってスポーツドリンクを飲み続けた。それによって尿意とも戦うはめになるから、やはり戦場だ。

 

俺が購入したのは竹花ノート先生のイラスト本、そよかぜアメちゃんのグッズ、SigさんのサントラCD、ひまのあせんせえの技術書。名取さなの合同誌も買いたくて真っ先に並んだんだけれど、残念ながら目の前で売り切れになった。ふーん、大人気じゃん。

 

それから、もう商品は売り切れだとわかっていながら、ある人のブースへと足を運んだ。挨拶だけでもしたかったからだ。「ニコニコメドレーシリーズ」の作者、しもゆき氏。俺の人生を歪ませた張本人。

 

「組曲ニコニコ動画」は俺がインターネットにハマるきっかけになった動画で、中学・高校の頃はニコニコメドレーシリーズをmp3が擦り切れるまで聴いていた。いまでも頭の中で時々鳴っている。

そんな動画群の作者であるしもゆき氏は俺にとって紛れもないスターで、実際に会ってみるとなんだか感極まってしまって、うまく喋れないほどだった。こういう経験は生まれて初めてだったかもしれない。

 

ここでニコニコにまつわる昔話でも書きたいところなんだけれど、8月10日はまだ終わらなかった。

 

東京ビッグサイトを出て、俺はとあるイベントに出席するために竹橋へと向かった。

主催はコルク代表の佐渡島庸平さんで、ゲストがActiv8代表の大坂武史さん。Activ8はキズナアイの運営をしている会社なので、その代表である大阪さんは親分の親分ということになる。イベント内容は、「VTuberキズナアイとupd8をビジネス面から語る、Activ8登壇の対談イベント」と第して、佐渡島さんが大阪さんに質問を投げかけるような形式だった。

参加者が質問できる機会もあって、俺は以前から気になっていたことを大阪さんから直接訊くことができた。どこまで書いていいか微妙なんだけれど、キズナアイという存在について不安だった面が少し解消されるような答えを頂くことができた。

 

イベントの後は軽い交流会があって、Vtuberのプロデューサーをやっている人や関連サービスを開発している人とVtuber業界について語り合うという、非常に楽しいひと時だった。

大阪さんとも一対一でお話することができた。俺は完全に初対面のつもりだったんだけれど、彼は俺のことをどこかで見たことがあると言っていた。いまはもう使っていないFacebookを見ると、共通の知り合いが結構いて、多分俺がスタートアップ界隈でピッチやらLTやら参加しまくっていた時に見たんだと思う。(そうじゃなかったら何かの動画?)

「upd8参加してくださいよー」なんて冗談めかして言っていたけれど、Vtuberを真剣に続けていけばそういう未来もあり得るのかなと想像してみたり。うん、面白いかもしれない。どうだろう。

 

そんなこんなで、帰宅する頃には身体がぼろっぼろになっていた。膝のアザとかいつできたのか不明。

リュックサックから取り出した紙袋には、よく見ると半裸の女の子がでかでかと印刷されていて、まるで何かのオタクみたいだなと思った。コミケには明日も行く。

塗田一帆(ぬるたいっぽ)

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