そろそろ橋本真実に気づいたほうがいいよ

橋本真実が橋本真実としてVtuberらしいことをやっていたのが面白かった。

彼女は2018年から個人勢としてYouTube活動をしていたんだけれど、昨日はその2周年記念ということでclusterイベントをやっていて、それに参加してきた。

 

橋本真実の外見はこんな感じ。全体的にモノクロな女の子ですね。

 

イベントは30分くらいの尺で、割とオーソドックスなお披露目のプログラムだった。

ただ、視聴者がコメントでリクエストしたポーズを取る中でとっさに華麗な側転を披露したり、「ダダダダ天使」を全力で踊る姿ってのはあまり見慣れないものだったので、わざわざVR空間まで行って観てきたかいがあったなと。

これは動きまくる橋本真実。

 

イベントの映像はYouTubeにアーカイブがあるのでこちらからどうぞ。

タイトルは「真実は此処に在る – Vtuber活動2周年 × 3Dお披露目配信 -」

 

「いきなり記念配信はちょっと……」って人は歌系の動画から入るのがいいよ。

 

「*ハロー、プラネット。」のカバー。ドット絵MVのクオリティがエグい。

※この小さいキャラクターは橋本真実ではなく「橋本ぴくせる」

 

 

橋本真実のオリジナル曲「金木犀の夢は」

これを気に入れば全部気にいるはず。

 

 

※ここから先、イベントとあまり関係ない話をします。

以下、俺の勝手な橋本真実論みたいなものを支離滅裂な長文で語るだけなので、そういうのに興味のない人は素直に彼女のYouTubeチャンネルに行って動画や配信アーカイブを観てきてください。

なお、本人に何か確認を取っているわけではないので大半がただの妄想です。

 

 

さて。

 

活動2周年ってのはわかる。2年前に活動を開始したから2周年。

じゃあ3Dお披露目ってどういうこと?っていう話からしようと思う。

何故なら彼女は最初の動画からずっと3Dだったから。

ちょっとスクリーンショットを使って説明するね。

 

これが1本目の動画なんだけれど、顔が映らない状態でVtuber的な動画を撮影している動画といういきなりのメタ。素直にVtuberデビューできない女の子――それが橋本真実。

 

……というような単純な話ではなくて。

 

ある程度目の肥えてる人ならわかると思うんだけれど、これって人の動きをキャプチャーしているわけではなくて、手打ちでアニメーションを動かしているんだよね。

つまり、このモデルの中に人は入っていない。

 

いくつか要因はあると思うんだけれど、おそらくオーソドックスなVtuberをできる環境がそもそも無かったんじゃないかなと思う。例えば、メイン機がMacだったとか。(一応、根拠としては8本目の動画にmacOSっぽいカーソルが写り込んでいる)

そういうVtuberって実は結構いて、FaceRigもVR機器も基本的に使えない上にゲームとかもできないものが多いからほとんど迫害を受けているような状況になるんだけれど、その中でできることを探していくと個性的な表現に行き着くってことが多い。Mac勢のVtuberは基本的に面白いよ。

いや、Macでもやろうと思えばWindowsを動かすこともできるし、なんならWindows機を買ってくればいいんだけれど、そこには諸々の高いハードルがあるのに加えて、あえて難しい方向性で創る楽しさっていうのが確かに存在していて、作品の一覧を見ていると後者の理由のほうが大きそう。

 

話は戻って、じゃあ昨日のイベントではどうやって動いていたのかと言うと、強いモーションキャプチャーがあるスタジオを借りて配信していたらしい。大手の企業勢Vtuberが使ってるようなやつね。アレよアレ。

これは3週間前に投稿されたオリジナル曲「夢現」のMVが初めてのこと。そういう意味で、Vtuber的な人が入る3Dモデルの橋本真実っていうのは今回作られたものが初めてで、リアルタイムでその中に入って配信したのも初めてだったから、”3Dお披露目”という表現になったものと思われる。

(※正確に言うと4本目の動画でカスタムキャスト的なものを使った映像が出てくるんだけれど、あれはおそらく「橋本真実」ではない。他にもほとんど同じ姿のキャラクターが沢山登場するので)

 

実はclusterイベントの中で彼女を見かけることは何度かあって、薬袋カルテの世界恒常性とか偶然隣で見ていたんだけれど、その時は「橋本真実」のアバターではなかったし、普通に観客だったのに、なんか急に向こう側に行ったなと。

この変化ってかなり新鮮なものに感じられて、俺が普段Vtuberを見ていて感動するタイミングってVtuberっぽいものから外れた時が多いんだけれど(人間として凄いとか物語として凄いとか)、橋本真実の場合はその真逆で、あまりVtuberっぽくないものからいきなり純度100%のVtuberになっちゃったから、驚いたし面白いなと思った。

 

それってきっと本人にとって大きな心境の変化があったはずで、何があったのかなって想像することしかできないんだけれど、去年のコミケで出した初の音楽アルバム「表裏一体」はひとつの大きなきっかけになったと同時にその一部始終を物語っている作品なのかなと思う。これね。

モノクロのジェケットが格好いいCD。

 

このアルバムは3曲のシングル、と言うより3部構成の1曲みたいになっていて、”FRONT”の「金木犀の夢は」、”BACK”の「花がらな現に」、そして”Center”の「夢現」という風に分かれている。

↑このリンクは全部YouTubeのMVになっているんだけれど、その概要欄とかに色んな情報が書き込まれているのでそれをベースにして考察・解説していこうと思う。

サムネを並べるとこんな感じ。

 

このアルバムは橋本真実の活動そのものをパッケージングしたような作りになっていて、曲調には統一感があるんだけれど、その中で色々と違う側面が見えてくるという感じ。

 

まず1曲目の「金木犀の夢は」では上記で触れたような独特な創作観みたいなものを「欠けたまま歩き出す」「咲かない蕾」「孵らない蛹(さなぎ)」みたいに”未熟のままでいること”を表すような言葉で表現しているっぽくて、それについて「誰にも見られたくない。でも、見てもらいたい。」というコンセプトで包んでいる曲。最後の歌詞は「気づいてよ」で終わる。

 

一方、2曲目の「花がらな現に」は、これは”裏”であるからもの凄くネガティブな表現を繰り返していて、そういった活動の中で傷ついたり苦しんだりっていうのが全面に出ている。MVで首くくってるし。メロディーに関しても「金木犀の夢は」のCメジャーに比べて黒鍵を多用するEメジャーになっていて、橋本真実ってモノクロだから白と黒の両方を持っているんだけれど、その黒側の曲という感じ。

 

で、3曲目の「夢現」、これは裏と表の間、つまり芯とか軸になる部分なんだけれど、非常に前向きかつ広がりを見せるような歌詞になっていて、一言で言うと自己という存在の肯定みたいな。特筆すべきワードは「色」で、それってぱっと見どこにも無いんだけれど(繰り返しになるけれどモノクロなので)、これこそが橋本真実が2年間の活動の中で見出したものだったのかなと。

 

※こっから先はこれまで以上に抽象的かつ哲学的な話になるので注意。

 

橋本真実って「真実」だし、昨日のclusterイベントのタイトルも「真実は此処に在る」だし、それが重要ワードとしてずっと扱われているんだけれど、真実とか革新とか美みたいな大切で面白いものっていうのは基本的に”何かと何かの間”にあることが多いと思うんだよ。例えば人生が生と死の間にあるように。

じゃあ「色」ってどこにあるのっていうと、デジタル的には黒と白の間に色がある。カラーコードで言ったら#000000〜#FFFFFFの間。ミスチルも「GIFT」でそう言ってたし。

でも「夢現」の中に出てくる色っていうのはそれとはちょっと違って、「景色が色づく」みたいな意味で使う方のやつ。金木犀だし、ざっくり言うと開花したということになる。花という状態は”蕾”と”花がら”の間ね。

つまり、その開花に使うエネルギーが自身の内側から流れていることに気が付いた。ってことになるんだけれど、それって「花がらな現に」みたいな状況からはかなり視点を変えないと見えてこないはずで、2年間の活動の中で得たその”新たな視点”こそが橋本真実をVtuberとして開花させたのかなと思う。

 

視点を変えるには何が必要になるか。きっとそれは他者だったと思う。(これに関しては本人の言及があったような気がする)

初期の橋本真実はずっと他者の力を借りない方向で創作活動をしてきたんだけれど、一番大きな出会いというのがおそらく「金木犀の夢は」からずっと音楽を担当している鯰畝(なまずうね)さんで、「表裏一体」の何が凄いかって音も歌詞も全部この人が作っている。橋本真実ではなく。

自分のストーリーを表現するのに他者に任せるのって創作者にとってはちょっと冒険的で、俺だったら凄く怖いなって思うんだけれど、3曲立て続けに作っているし、他に歌ってみたのMixとかでも協力してもらっている所を見る限り「表裏一体」はかなり”真実”に近いものに仕上がったんじゃないかなと。

 

それと同時に、やっぱりYouTubeコンテンツだから視聴者という他者も存在していて、良いものを作ると評価されるし、こうやって文章を書く人なんかもいたりして、本人も何かで言っていたけれど、きっとそれも意味のあるものだったと思う。ずっと”気づいて”ほしかったわけだし。

そんな風に、鯰畝さんだったり、その辺の視聴者だったりの他者と長く関わり続けて、自己と他者の間(要するに人との関わり合い)を経験していく中で新しい視点を得られたのかなと。

 

……いや、これ全部俺が勝手に言ってるだけの妄想なんだけどさ、俺にはそういうストーリーに見えたよって話ね。今更だけれど念の為。

 

ちなみにバーチャルってのは現実と空想の間にあるし、Vtuberという存在も人間とキャラクターの間にあるから素敵で面白いんだけれど、その中のかなりキャラクター側から人間側の方に向かっていっていまの場所まで辿り着いた橋本真実が、この先一体何を目指して何を作るのか、それがもの凄く楽しみだったりする。

clusterイベントの中では、もっとVtuberらしいことにチャレンジするみたいなことを言いつつ、自身を創作物として扱ってもらうような構想とか、短編映画を撮るとか興味深い発言を連発していたし、映像の撮影のためにマジでドローンを購入したらしいので、果たしてどんなものが上がってくるのか、今後も目が離せない。

 

そういった挑戦というのは、おそらく一筋縄ではいかないと思う。

でも、この先は何かで躓いたとしてもまぁ大丈夫。大抵のことはなんとかなる。

これといった根拠はないんだけれど、昨日見た彼女はそういう表情をしていたから。

 

みんな集合してハイポーズ!

 

橋本真実YouTubeチャンネル

鯰畝YouTubeチャンネル

塗田一帆(ぬるたいっぽ)

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