久々に本物のバズを見た。
彼女の名前は斗和キセキ。3月1日にデビューしたばかりの新人Vtuberだ。
通常、新人Vtuberというのはなかなか数字(ファン)を獲得できないようになっている。業界が完全に供給過多で飽和状態だからだ。そこで、新しくデビューするVtuberというのはコンスタントに動画をアップして、ハッシュタグを駆使して、じわじわと伸びていったり伸びていかなかったりするものだが、彼女は違った。
いや誰がガンダムアストレイレッドフレーム改だよ💢💢💢💢(調べた) https://t.co/Js5Xlucdai
— 斗和キセキ▷バーチャルYouTuberはじめやした! (@towakisekiv) 2019年3月4日
3月4日のこのツイートをきっかけに、半日で彼女のTwitterの新規フォロワーは3万人にまで膨れ上がった。どうしてここまで多くのフォロワーを獲得できたのか、上記のツイート自体は現時点で7000RTされているが、それだけが要因ではないと断言できる。背中のパーツがちょっとガンダムに似ていたからと言って、フォロワーというのは簡単に獲得できない。そこで以下、「なぜ斗和キセキはバズったのか」というテーマについて掘り下げていきたいと思う。
まず最初に、彼女がデビュー初日にアップした2本の動画を紹介したい。
【バーチャルYouTuberが】RAINBOW GIRL (covered by 斗和キセキ)【バンドやった】
【検証】バーチャルYouTuberはプロレスラーから何分逃げ切れるのか
1本目が実写映像を含んだ本格的なMV、2本目が思いきりふざけたバラエティ的な企画となっていて、大変バランスが良い。
この完成度の高い3Dモデル(かわいい)と、2本の動画を見ただけで、”かなり力を入れている新人”であるということがわかる。特に2本目の動画はずば抜けて奇抜な企画を決行していて、単純にエンタメとして面白く仕上がっている。
次に、彼女は他のVtuberとは少し異なるデビューの仕方をしている、ということを解説したい。
いまから遡ること約2週間前、ひとりの男が「3月1日に重大発表がある」という言葉を残してインターネットから姿を消した。それが、彼女のプロデューサーを務めているじーえふである。
じーえふくんを一言で説明するのは非常に難しく、直接会ったことのある俺でも完全に掴みきれていないので、ここでは詳細は割愛する。もし興味のある人がいたら、彼の著書(マッハ新書)「こうしてわたしは22歳バーチャル女子大生になった」と、彼のブログ「じーえふメモ」を読むことをおすすめする。
そのじーえふくんの重大発表というのが、「斗和キセキを含む5人のバーチャルタレントの運営に参画している」というものだった。そして、以前からVtuber界隈を追い続けていた者たちはその5人を”じーえふくんが運営するVtuber”として注目することとなる。特に、3月3日深夜に行われたじーえふくんの生配信(アーカイブは公開されていない)では、斗和キセキのことを「新しい世代を創るVtuber」として熱く語り、リスナーの期待値は最高潮まで高まっていた。
そこで、”レッドフレーム改”である。
ここまでで言えることがひとつあって、初動として完璧なものであったように思う。
インターネットのバズというのは格闘ゲームの必殺技のような性質があって、大きく伸ばす為にはある程度下準備ができていないと難しい。彼女の場合、きちんと自分のコンテンツを持っている状態かつしっかり期待値が高まっている状態で最高のパスを受け、それをきっちりと決めることができたと言える。
また、彼女のキャラクターがまだ今ひとつ掴めていない状態で、「レッドフレーム改に似ている」というイジりが突きつけられたのは、「じーえふのところの子なら大丈夫だろう」という安心感も手伝っていたかもしれない。
そして、”レッドフレーム改”以降の一連の流れも完璧だった。
彼女のTLを遡ればわかることだが、面白いパスは徹底的に拾い、自身の素材画像を提供するなど、”インターネット住民のおもちゃ”としての振る舞いを突き通した。そんな中でサンライズ公式から認知される、Twitterトレンドに入る、フォロワー数がガンガン伸びていくなどの現象を事細かに報告し、「自分はいまバズっている」というのをしきりにアピールしていた。これにより、彼女はバズの向こう側へとたどり着く。
変な新人Vtuberが意味不明な流れでバズっているという現象自体が面白い。
ここまでくると、もはや彼女が何を言っても勢いは止まらない。YouTube動画でネタにする者もいれば、俺のようにブログ記事を執筆する者も現れる。背中のパーツのモデルを自作して配布し、謎の集会を開く者だって現れるのだ。(これは本当に何なの?)
こちらが突発斗和キセキ集会の様子です(((限界モデリング部#towakiseki #VRChat pic.twitter.com/egrTG6DePk
— コラテラル (@Coraterarus) 2019年3月4日
さて、ここまで「なぜ斗和キセキはバズったのか」について語ってきたが、ひとつ重要な点にあえて触れていなかった。
「ただの新人Vtuberが、何故上記のような完璧なインターネット強者のムーブをすることができたのか?」
これについては、ひとつ、思い当たる節がある。それは、じーえふくんの分身とも言えるVtuber「じーえふママ」が関係している。
何も知らない人に伝えるにはかなりややこしい話になるので、ざっくりとだけ説明すると、じーえふママというのは以前じーえふくんが使用していた2Dアバターを再利用して生まれたVtuberで、その中の人(魂)はじーえふくんが自ら公募・厳選して決められた。その際に用いられた方法が、「テキストによる自己アピール」というものだった。それを勝ち抜いたのが、現在のじーえふママというわけだ。
これは俺の推測に過ぎないが、これと同じような選出方法を斗和キセキの選考でも行ったのではないだろうか。即ち、元々歌声やトーク力だけでなく文章や大喜利的な発想力すら兼ね備えたキャラクターとして、斗和キセキは誕生したのではないかということだ。
これはVtuberに限った話ではないが、SNSでのアピールというのは現代社会で目立つためには必須項目であり、Vtuberにはそれを自分自身の力でしっかりとこなすことが求められている。だとすれば、選考基準にSNSでのアピール力が入っていたとしても何らおかしな話ではない。実際、動画が面白いよりもTwitterが面白い方がフォロワーは増える。ただし、彼女の場合は動画も面白そうだ。だから、これからへの期待の意味を込めてフォローする者も多かったのだろう。
最後に、ここまで書いておいて全部ひっくり返すようでなんだが、SNSでバズるかどうかは運の要素が大半を占める。しかし、その運を掴んだ時の”伸び率”については、工夫と行動によって高めることが可能だ。
もし、それを最大にするために必要な要素が最初から全て揃っていたとしたら、それは果たして”奇跡”と呼ぶべきだろうか。
あるいは、SNS運用の全てをプロのインターネット強者がやっている可能性も捨てきれないが、それについては、流石にそんなことないと思いたい。うん、無いよね?
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