「ボタン恐怖症」って知ってる?
知らない人には冗談にしか聞こえないかもしれないけれど、これって実在する病気で、洋服とかについているあの「ボタン」が怖いという症状が出るもの。人によってはそれを見るだけでもダメで、外出ができないレベルで生活に支障をきたすらしい。
そういう珍しい恐怖症というのは世の中に沢山あって、例えば俺の祖母は「猫」が怖いんだけれど、そういう人って絶対にインターネット見られないよね。だって、猫なんて防ぎようがないから。Twitter見てたら毎日遭遇するもの。猫、やたら数字出るし。
で、俺の話なんだけれど、にじさんじ所属Vライバーの「健屋花那(すこやかな)」が怖くて仕方がない。
こちらが健屋花那さんのプロフィール。初配信のアーカイブより。
病院で働いているナースさん(?)らしく、それっぽい服を着ている。キャラクターデザインはかやはらさんで、正直言って凄く可愛い。これは患者としてお世話されたいですね。
しかし、これは本当に彼女は何も悪くないんだけれど、マジで怖いんですよ。この健屋花那という存在がVtuber界隈にいるという状況そのものが。
俺ね、「嘔吐恐怖症」なんです。
要するに、ゲロが怖い。自分で吐くのなんて論外だし、他人が吐くのも、なんなら「吐いた」という話を聞くことや、その事実があるというだけで怖い。いま、この文章をタイピングするのに生唾を飲み込みながら指を震わせている。
ここまで読んで、まだピンときていない人のために説明しようと思う。
彼女、健屋花那さんは「嘔吐フェチ」なんですね。つまり、俺とは対局に位置する性的嗜好。光と闇……ではないな、病みと闇かな。それで、彼女は嘔吐に関する企画(??????)をにじさんじ内でやっていたりとかするわけですよ。「嘔吐シチュエーションのプレゼン大会」とか。もうね、この字面だけでキツい。
「そんなんブロックすればいいじゃん」って発想に普通ならなると思うんだけれど、Vtuberをブロックするとか、それこそ宗教上の理由で無理なので、完全に詰んでるんですよ。俺は健屋花那から逃れることができない。他のにじさんじライバーも、彼女が登場して以降よくそういう話題を出すようになってきたし、にじさんじ公式アカウントに至っても、そういう情報をガンガン流してくる。
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俺の中では、「嘔吐」というジャンルはグロコンテンツであって、それってゾーニングするべき対象なのでは?とも思うんだけれど、前置きで書いた通り、人によって地雷というのは本当に多種多様で、その全てに配慮するというのは現実的ではない。「猫が怖いので写真をアップしないで」なんて意見が通るはずがない。
……いや、流石に猫よりは配慮すべきだと思うんだけれど、これはかなり微妙なラインというか、医療系のテレビドラマに対して「食事どきに手術シーンを流すな」と言うようなもので、まあよくある話とも思える。
それに、直接そういう描写を垂れ流しているわけでもないし、精々上記のイメージイラストくらい。それなら、我慢できなくもない。
さて、最近は「にじさんじクイズ王決定戦」などの大型企画でも活躍している健屋花那さん。チャンネル登録者数は14万人を超えているし、今後もどんどん色んな舞台に登場すると思われる。それを、彼女がいるからという理由だけで見られないのは、非常に勿体ない。それに、「ライブ配信で顔を見ただけでブラウザバックする」というのは、彼女に対して滅茶苦茶失礼な気がする。
そこで、頑張って克服することにした。
これから書いていくのは、その治療の記録である。
まあ結論から言うと、上で書いた通り、まだ怖いものは怖いんだけれど、今日になってようやく少し改善が見られたので、このタイミングで、これまでに体験してきた全てを書いていこうと思う。
少し時間は遡って、ここからは去年の話。
俺は都内のとある精神科を訪ねて、恐怖症克服のためのプログラムを受けることにした。これは実は前々から決めていたことであって、健屋花那さんの登場と時期的に被ってはいるものの、「健屋花那を見たいから受診した」というわけではない。あくまでも、自らの生活力の向上のために受けたもの。しかし、結果的にVtuberというジャンルを追うために必要なスキルとなってしまったので、こうして健屋花那さんを絡めて書いている。
精神科には週に1度くらい電車で通って、カウンセリングというやつを受ける。
この内容がなかなか面白くて、曝露療法(ばくろりょうほう)というんだけれど、「少しずつ恐怖の対象に慣れていく」というもの。具体的に何をするかというと、まず最初は絵を見る。
確か1枚目は、顔文字のような記号的な表現からスタートしたと思う。それは具合の悪い人間の顔に見えるもので、「😨」をもっとシンプルにしたようなやつ。それは、流石に怖くない。
同じようなのを何枚か続けて見ていくと、「両手で口を抑えた顔色の悪い女の子」とかが現れる。スヌーピーのキャラクターくらいのデフォルメ加減で、これも恐怖というのは感じない。別に吐いているわけではないし。それが、何十枚と進んでいくと、徐々に、本当に少しずつ俺が恐怖を感じるような絵になっていく。「便器に顔を突っ込んでいるおじさん」くらいになると、少し怖い。もし怖いと感じたら、時間を置いて、また1枚目からやり直す。これを、怖くなくなるまで続けることになる。
これが本当に不思議な体験で、最初は怖いなと感じていた絵も、慣れてくると大したこと無いと思えるようになってくる。「便器に顔を突っ込んでいるおじさん」も、登場3回目くらいには「お、久しぶり。今日も吐いてるね〜」くらいのノリになる。これが、暴露療法という治療の真髄である。
そのフォルダに入っている全ての絵に対して何も感じなくなったら、今度はそれが写真になる。
とは言っても、最初は人間の写真ではない。「具合の悪そうなゆで卵」からスタートする。そのゆで卵には顔が書いてあって、何枚も見続けていくと、最終的には口の部分が開いて中から半熟の黄身が垂れてくる。これがゲロに見えるので、最初は怖い。それでも、何度も繰り返し見ているとやっぱり慣れてきて、平気になる。
ゆで卵の次は動物の写真で、確かライオンとかの嘔吐シーンが登場する。これに関しては、「こんなのよく撮影できたな」という感心が勝って恐怖は感じない。そういうのをまた何十枚も見て、ようやくヒトが出てくる。
ヒトに関しては3段階あって、最初は静止画→次に音声→最後に動画という感じで、徐々に恐怖度が増していく。本当に目を背けたくなるようなものも入っているんだけれど、それでも頑張って見続けていると、やはり慣れてくる。人間って凄い。
こんな感じで、全部で5回くらいのカウンセリングプログラムを修了した。まあその時点では恐怖症が完治したわけではないし、目に見えるほどの変化は無いんだけれど、それでも、暴露療法のコツは掴めた。要するに、怖くなくなるまで見続けていると慣れる。最初は軽めのやつから試して、徐々に恐怖度を上げていく。これだけだ。
……とは言ったものの、自らそういうコンテンツに飛び込むというのは、やはりキツい。カウンセリングなら場所が病院で、カウンセラーが目の前にいて、何が起きても大丈夫という安心感がある。しかし、例えば電車で移動中にスマホでそういう動画を見られるかと言うと、ちょっと無理だ。だから、YouTubeを見ていて不意に出現する健屋花那さんというのは、やはり苦手なままだった。
そして、昨日だ。
TLに彼女の切り抜き動画が流れてきた。こういうのは基本的に安心して見られる。何故なら特定の話題についてその部分だけを編集で切り抜いているので、タイトルを見れば地雷でないことがわかる。
内容は、上に書いた「にじさんじクイズ王決定戦」での彼女の活躍を切り抜いたもの。実際のツイートがこれだ。
ロアちゃんの魔界訛りに惑わされずに完璧な回答をする健屋すごい…#にじクイズ王 #健屋花那 #夢月ロア pic.twitter.com/J8j2gYeRph
— もすもす🌈🕒 (@mosupine2434VvV) March 7, 2020
これ凄くない!!!???
本編を見ていなかったというのもあるけれど、俺はこの問題の意味すらわからなかった。
そして、この切り抜きに痛く感動した俺は、ようやく決心する。
健屋花那を、そして嘔吐フェチという特殊性癖を、理解したい。
はっきり言って、完全に食わず嫌いだった。怖いから避けていただけ。しかし、あのようなカウンセリングまで受けておいて、そのまま避け続けていていいものだろうか。いまこそ、あの暴露療法を思い出して、健屋花那というコンテンツと向き合うべき時だ。
うおおおおおおおおおおおお
※嘔吐、同性愛表現があります。苦手な方はご注意ください。
……だと?知るか!俺は健屋花那コンテンツを楽しみたいんだよ!そこをどけ!
うおおおおおおおおおおおお
ここまで意味深な「不明なアーティスト」って初めて見たわ。
いいだろう。その完全に未開拓な領域に飛び込んでやろうじゃないか。こっちはこの4分26秒に1000円も払っているんだ。花譜のEP「花と心臓」よりも高いぞ。今更怖気づいて立ち止まれるかよ。再生!!!
……。
結論として、別に、大して怖くなかった。
一言感想を言うとすれば、「ああ、こういうジャンルがあるのね」って感じ。BL的な要素もそこまで色濃く無かったし、どちらかというとベルさんのサディスティックなキャラにぞくぞくするみたいな、そういうタイプのやつだと思う。あんまよくわからんけれど。
暴露療法、やったかいがあった。
結局の所度胸と慣れだからね。
まあ何はともあれ、このダウンロード音源が大丈夫だったということは、YouTubeのライブ配信とか余裕なのでは?ということで、ついさっき健屋花那さんのチャンネル登録してきました。もし配信コメントで見かけたら、そっと見守ってください。
ということで、以上が俺が健屋花那さんの登録ボタンを押すまでのお話でした。
みなさんも、たまには食わず嫌いしているコンテンツに触れてみてはいかがでしょうか。新しい扉が開けるかもしれませんよ。
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