「カスタムキャスト」で火傷した

先日リリースされたスマホアプリ「カスタムキャスト」を触った。

このアプリは、お手軽操作で自分好みの3D美少女アバターを作成することができ、「ニコキャス」と連携することによって動画配信まで行うことのできる素晴らしいサービスだ。操作が凄くシンプルで、公式のキャッチコピーの通り、誰でも簡単に扱うことができる。

「Vカツ」や「VRoid Studio」がリリースされた時もそうだったけれど、俺のTwitterのTLには多くのスクリーンショットが並んで、作者の性癖がぎっちぎちに詰まった幕の内弁当のようなアバターや、既存キャラクターを本格的に再現したものなど、様々な美少女で彩られていた。

しかしそんな中で、俺はとある事情により自作のアバターをアップできないでいた。

 

アバターを作ること自体は非常に楽しかった。

最初から用意されているサンプルアバターがそもそも既に可愛いので、そこから少しずつ顔や髪型、服装、そしてアクセサリーなんかを自分好みにカスタマイズしていく。膨大な量のパラメーターをぐりぐりと動かして、「瞳はもう少し丸いほうがいい」とか、「前髪は長めにしよう」とか弄っていくわけだ。画面の中の女の子を好き勝手に改造しながら「あ〜いいっすね〜」とかぼそぼそ呟いている自分は、客観的に見たら完全に近寄っちゃいけない人になっていたけれど、そんなことは微塵も気にならないほど作業に没頭していた。

そういえば、Vtuberの響木アオちゃんがライブ配信でこのアプリの体験をしていた様子が凄く可愛かったので紹介しておく。女の子のこういう反応は、言葉にはし難いが、とにかくグッとくるものがある。古い言葉を借りるとすれば、「萌え」だ。

 

 

俺の話に戻ろう。

時間をかけるほどに、画面の中の女の子は俺のタイプに近づいていく。そしてそれと同時に、「あ〜いいっすね〜」の声量はクレッシェンドしていき、胸とスマホは熱くなった。

スマホに関してはマジで発熱が酷かったので、俺の機種はそういうのに向いていなかったのかもしれない。しかし、低温火傷の危険と天秤にかけてでも、俺は”その子”を完成させたかった。

 

首から銀色のネックレスを掛けたところで、ついにその子は完成した。

うむ、どこからどう見ても可愛い。ちょっとこの姿で配信でもしてみようか。なんてことを考えながら、色んなポーズをとらせて鑑賞する。客観的に見たら完全に結婚できない男2018になっていたけれど、そんなことはどうでもいい。とにかく、その子が可愛い。

 

しかしここで、ある違和感に気がつく。いや、既視感と言ったほうが正しいだろう。

確かにその子は、誰かに似ている。最近見たVtuberだろうか?いや、こんなにどこにでもいるような地味なキャラクターはなかなかいない。それなら一体誰と……

 

 

あ、これ元カノっすね。

 

 

まんまじゃん。顔も髪型も、19の頃の俺が一目惚れした”あの子”じゃん。その銀のネックレス、俺が誕生日にプレゼントしたやつだし、その服なんてあの日に着てたやつでしょ。よくデフォルトで入ってたな。

ほんと無意識って怖い。こんなアプリの中に己の本能を見ることになるとは、それによって心をえぐられることになるとは、思ってもみなかった。もしこれからカスタムキャストを試す人がいるなら、その覚悟を持ってから挑んだほうがいい。

 

 

ちなみに、その後一度だけニコキャスで配信してみたんだけれど、自分の声が震えているのがわかったのですぐに止めた。

画面の中で鏡写しのようになっているその子は、少し寂しそうな目をしていた。

 

塗田一帆(ぬるたいっぽ)

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