「文字を読む動画」と聞いて何を思い浮かべるだろうか。
YouTubeの芸能ゴシップニュースを垂れ流す動画?
ニコニコに時々載っている2chのまとめ動画?
そういったコンテンツを否定するつもりはないけれど、今回紹介する「文字を読む動画」は、それらとは一線を画する正真正銘のエンターテインメント作品となっているので安心してほしい。
筆者は小学校のPCでおもしろフラッシュを見ていたような世代で、インターネット動画に育てられたと言っても過言ではない。ニコニコ動画の毎時ランキングを毎時チェックしていたし、YouTubeが盛り上がりだしてからは500近くある登録チャンネルの新着動画を毎秒チェックしている。
そんなわけで、「面白いネット動画なら大抵知ってるよw」というスタンスでこれまで生きてきたつもりだった。昨日までは。
「平面惑星」を初めて視聴したとき、酷く混乱した。
「なんでこれが無料で公開されているの?」
「どうして再生数が7000とかなの?」
「そもそもこれ何ていうジャンル?」
「あと涙が止まらん!!!」
その涙の理由は、未だによくわかっていない。何故なら、感動や悲しみではなく、純粋な”面白さ”だけで涙を流したのは生まれて初めてのことだったから。
本作を知るきっかけとなったのは、DoGA CGアニメコンテストという自主制作CGアニメのコンテスト。その入賞作品としてこれが発表されていたわけだけれど、きっと審査員も相当困惑しただろうと思う。
なんせ、主人公が棒人間。そして、一切の台詞を発さない。
DoGA CGアニメコンテストというと、これまでに「君の名は。」の新海誠監督や「けものフレンズ」のたつき監督を輩出している、国内で最も伝統のあるCGアニメのコンテスト。
それに送りつけられた棒人間の動画。そして堂々の入賞。
これだけで、どのくらい異常な事態か伝わったと思う。
主人公は一切喋らない。じゃあどうやってストーリーが進むのかと言うと、全編通してキネティック・タイポグラフィという手法で”映像と音楽と文字の掛け合わせ”によって作られている。
これが本当によくできていて、脚本も映像も音楽も全部ひとりで作っているんだけれど、だからこそというべきか、まるでミュージックビデオのような心地の良い小洒落た演出を毎フレーム投げつけられるような感覚。それでいてきちんとストーリーが進行していて、これがまた信じられないほど面白い。細部まで凝っているんだけれど、一切の無駄がなくシンプルだし、それでいて奥深い。25分間の映像に、映画一本分にも勝るエンターテインメントが詰め込まれている。
表現方法が特殊なだけあって、特に最初の数分間は「よくわからん」という人もいるかもしれないけれど、「まあ見てなって」とだけ言っておく。少ない情報から状況を読み取ろうとしているうちに、いつの間にか物語に没入しているはずだから。
本作の作者である機能美pいわく、
「映像も音楽も全て独学。映像制作には未だにFlashを使っていて、自分が出来る範囲の事で、感動を最大化するために映像、音楽、物語をリンクさせる手法を生み出した」
とのこと。
要するに、あれだ、天才。
そしてジャンル名なんて無かった。
さて、称賛するのはこのくらいにしておいて、肝心の動画を貼らなくては。
ここまでネタバレなしでたどり着いたあなたは本当に運がいいと思う。どうか、最後の最後まで楽しんでほしい。
もし本作が気に入ったなら、同じチャンネルに年末年始にぴったりな作品「煩悩事変」もあったりするので、是非この機会に彼の世界を堪能してほしい。それでは。
平面惑星[Flat Planet]/ 機能美p (直リンクはこちら)
個人的な後日談はこちら
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