自分だけの漫画村をつくろう!

クリエイターというのは常に金と権利の問題で困っている。

某歌手の有料ファンクラブ騒動を眺めていて、それを再認識した。

 

作品作りには道具も環境も時間も人手も必要で、だから金が要る。

でもそこで、「次の作品を出すには◯◯円必要です」とは中々言いづらい。大抵の作り手は現実の自分とは少し違うキャラクターだったり、ある種の世界観を作っている。そこに金とか法律とかの生々しい話が入り込んでくるのは、見ている方にとっても苦しい。好きな作品の見積書は、できることなら見たくない。

 

クリエイターの作るもの、とりわけデジタルコンテンツは、「無料で当たり前」みたいな風潮がある。これが、かなり深刻なところまで来ていると感じる。

某漫画村の問題ですら、未だに決着がついていない。少し前の「例のサイト」こと、某フリーブックスは無事閉鎖されたけど、色々と難しいんだろう。

 

これにはデジタルコンテンツの特性が大きく影響していて、「複製可能で腐敗しない」という点が問題に繋がる。

料理とか洋服はこれに当てはまらないから、「カレー村」とか「フリーTシャツ」で違法に出回ったりしない。欲しかったら確実に買う。一方、デジタルコンテンツは際限なくコピーできて、腐らない。

それによってコンテンツの供給過剰も発生していて、見たい作品を全て買うのが難しくなっているというのもあると思う。

 

ブラウザで閲覧できるのも大きい。

ダウンロードと違って、「悪いことしてる感」が薄い。実際、一般的なブラウジング(ストリーミング)は現状の法律では取り締まれない。だから、罪悪感を抱くこと無く閲覧してしまう。

実際は回り回って被害が発生するんだろうけど、目には見えない。

そういった諸々の事情で、無料アプリや違法アップロードサイトに人が集まる。

 

音楽系のアーティストに関しては、何年か前から、音源そのものよりも「体験」を売るパターンが増えてきた。音源はYouTubeで無料で聴けたりして、グッズとかおまけに近いような扱いも多い。

ライブはコピーや保存ができない。握手会も、チェキ会も、その場にいないと楽しめない。だからアーティスト(特にアイドルとかV系)のファンは金を出すことを渋らない。

 

動画系のクリエイターであれば、その戦略を真似することができる。ライブ配信で交流したり、UUUMがやってるファンイベントとか、関西コレクションに飛び入り参加した事務所もあったような気がする。何故か記憶が曖昧だけど。

一方、紙媒体をつくるクリエイターがこれを真似するのは難しい。ライブペインティングとか一応あるけど、基本的には完成品の提供が求められている。握手やチェキは、あまり求められていない。むしろ作者の顔とか見たくない。

 

しかし、そんな状況の中でも光はある。

インターネットを味方につけて活躍している漫画家が、ポツポツと現れはじめている。

 

漫画はSNSとの相性がいい。音が要らないし、1分で楽しめる。これは動画や音楽にはない強みだ。

最近はTwitterで連載していた漫画が書籍化するパターンをよく見る。

「こぐまのケーキ屋さん」が投稿6日目(世界最速?)で書籍化決定したり、「おじさんと女子高生」「パティシエさんとお嬢さん」「妻は他人 だから夫婦は面白い」あたりも滅茶苦茶な速度で出版までこぎ着けた。

 

これらの作品は、作者自信がソーシャルで力を得る。

だから自分のファンやその周辺に直接宣伝して、買ってもらう & 拡散してもらうことができる。

他の仕事に繋がることも期待できるし、仮想通貨の投げ銭サービスなんてのも出てきて、まさに評価経済社会というやつを感じる。

 

SNS漫画の特性として、違法アップロードの被害を受けづらいというのがある。もともと無料で綺麗にまとまっているものを、わざわざ別のサイトには読みにいかない。そもそも、自分から読もうと思わなくてもRTやネットニュースで回ってくる。これもやっぱり強い。

加えて、高速でサイクルを回せるというのも大きなメリットだ。

「いいコンセプト思いついたかも」くらいのタイミングで、数ページだけ漫画にする。表紙もカラー原稿も要らない。

評判が良ければ続けて、悪ければ止める。これによって、「いま読者が求めているもの」という、出版社が必死こいて探しているまさにそれを自分の肌感覚として掴むことができる。場合によっては編集者にアドバイスを貰うよりも正解に近いものを得られるかもしれない。

 

漫画家やイラストレーターがみんなこれを真似すればいい、とは言わない。作風や性格によって向き不向きがあるし、同じ手法でジャンプ作品は描けない。「HUNTER×HUNTER」とか絶対無理。色んな意味で。

それに、SNSで漫画の技術を磨くのには限界があると思う。その点はやはり業界のプロに力を借りるのが推奨される。

それでも、選択肢のひとつとしてはアリだと思う。

自分たちを脅かしているテクノロジーを逆に利用してやれたら、漫画みたいでカッコいい。

塗田一帆(ぬるたいっぽ)

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